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2004.12.10

季節の裏側

 昔からそうなんだが,そのときの季節とは正反対の季節を想ってしまう.

 たとえば今の季節なら,頭の中では夏を懐かしむ.冷たい風が吹き,紅葉が深まり落ち葉が舞い散る,曇った日には雪が降るかも……と思いながら,真夏の,灼熱の太陽とアスファルトの融ける匂いを感じてしまう.

 真夏になると,冬の朝の身を切るような,ガラスのようにシンと静まった大気を思う.

 過ぎ去った季節を懐かしんでいるのか,無いものねだりをしているのか,現状から逃げ出したいのか,はたまた半年先を先取りしたいのか.たぶん,先取りをしているのだろう.いまなら「夏になったらこんなことしたい,あんなことしたい」と考えてしまうから.

 でも,時としてひどく昔の光景が思い出されて,そんな戻れない夏の日のコーラとラジオから流れるプロ野球中継とが懐かしくて仕方がなくなる.真夏の首都高速の渋滞の黄昏時,車にエアコンなんかついていなくて,AMラジオからは神宮球場の野球中継,片手はハンドルに,片手にコーラの缶.むせるような熱気にはアスファルトとエンジンオイルと排ガスが混ざっていて…….

 今朝,地下鉄の駅に向かっている途中,後ろからやってきた自転車に抜かれたときに,そんな真夏の甘い記憶が唐突によみがえった.もう17年も前の記憶だった.

 もしかしたら「次の夏にこんなことしたい」ではなくて「あの夏に戻ってこんなことをしたい」だったのかな.
 

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