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2005.01.25

秒針のミステリー

青空

 昨春に,奥歯が冷たい水や空気に凍みるので,歯医者に行ったところ「知覚過敏ですね」と診断され,レジンで歯の根元を保護してくれた.おかげで凍みることはなくなったが,「それとは別に虫歯がありますから,治療しましょうね」.おかげで虫歯は治療してもらったし,歯石も沈着していた色素も取り除いてもらって,実に気持ちがよかった.
 
 歯磨きのときに同じ場所から磨き始めるのが知覚過敏の原因だったらしい.歯ブラシに練り歯磨きをつけて,左奥の上から磨き始めるのが習慣化していた.小指の先にも満たないほどの練り歯磨きであっても,研磨剤であることには変わりない.唾液で希釈される前の研磨剤が,いつも同じ場所を攻撃していたのだ.おかげで歯と歯茎を磨耗させていたようである.
 
 そこで考えた.磨き始めの場所を満遍なく均等に割り振れば,一か所だけが集中攻撃されることがなくなるのではないか.では,満遍なく均等に磨き始めの場所を決定するには,どういう方法があるだろうか――.
 
 最初に試したのは,奥歯四か所つまり右上→右下→左下→左上に番号を振る.時計回りに1→2→3→4.そして,最初の日を1として翌日は2,その次の日は3……と進め,4の次の日は1に戻る――という方法だ.ただし,この方法だと時々「あれ? 今日は何番だっけ?」と迷いが出る.迷いが出ると面倒くさくなる.そして「仕方ないから,1番から再開するか……」となる.
 
 1ヶ月ももたなかった.
 
 次に考えついたのは,洗面所に置いてある時計の秒針がどこにあるか――を,その時の磨き始めの場所にするということだ.秒針が0~15秒の間にあるときには,右上奥歯から磨き始める.歯磨きを始めるときに「むむっ」と時計をにらみつけた瞬間の秒針の位置だから,アットランダムになっているはずである.これで満遍なくスタート地点を変えられるだろう,と考えた.
 
 が,不思議なことに,右下または左上からスタートすることが,圧倒的に多いのである.毎日の決まりきった動作,すなわち習慣の繰り返しであったとしても,所詮は人間の動作だから数十秒以上の誤差があるはずなのだが,不思議なことに4日ほど20秒前後が続くと,次の3日間は50秒あたり,つまり右下が続き,次に左上が続き……となるのだ.そしてその次は再び右下になる.
 
 JAGというテレビドラマには,時計を見なくても秒単位で時間を当てられる特技を持つ法務官が出てくるが,実は,人間の習慣というのは,自分自身で自覚している以上の正確さを持っているのか? いやいや,毎日完全に同じ動作を繰り返しているわけではないから,やはりこれはおかしい.秒針の位置は同じでも,分針の位置は毎日違っているくらい,習慣と呼ぶには,あまりにもいい加減で大雑把な日常生活なんだから.
 
 極私的日常生活に潜む謎である.やはり,時間の進み方は均一でないのかもしれない.
 

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