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2005.02.07

丸呑み

こちらは鬼門

 レースのカーテン越しに影が動いた.
 
 近所には結構な数の野良ネコ飼いネコ取り混ぜてがウロウロしている.隣家との間にある塀を哨戒している猫を見かけるが,よくまぁ,あんな狭いところで器用に歩いたり寝そべったりしているものだ.
 
 尻尾を立てたオシリを突き上げ腰を振りながら,何かを狙っていたりする.時々はベランダまで入り込んで日向ぼっこをしているようで,去年の春だったか,窓を開けて外に出たときに,使わずに伏せてあった素焼きのプランターを蹴飛ばして逃げていった.物置の上に梅鉢文様の足跡が残っていたりする.好きだからいいけどさ,壊さんでな.
 
 猫が哨戒していると鳥が騒ぐので,それと知れることが多い.特にこの季節,ヒヨドリが大騒ぎをするのだ.
 
 隣家にはかなり大き目の木が植わっている.3階建てくらいの高さはあるだろうか.名前は知らないが落葉樹で,いまは葉のすっかり落ちてしまった枝の向こうから,太陽がぽかぽかと降り注いで,晴れた日中には暖房を止めてもいいくらいに室内が暖かい.夏には葉が茂り,周囲を適度に目隠ししてくれるので,林の中の別荘地の雰囲気を味わえたりする.他所(よそ)の庭だが,大変お世話になっている気分である.
 
 この木にヒヨドリがやってくるのだ.23区内は何処もそうかもしれないが,この辺りにもカラスが多い.だが,さすがのカラスもヒヨドリには負けるらしく,ヒヨドリの時季にカラスを見かけることは少ない.そしてこのヒヨドリが,猫がやってくると大騒ぎをする.
 
 塀の上を歩いてきた猫は,たいていは恨めしげな顔をして頭上の大騒ぎを()めつけ「おぼえてろよぉ」と捨て台詞を残してそうな感じで( 猫にあったとして )肩を揺すって立ち去ってゆくのだった.そのあともしばらくの間,ヒヨドリは大騒ぎを続けている.けたたましく鳴き続けているが,あれは勝ち誇っているのだろうか.
 
 ヒヨドリは声が美しくないのと,大勢で大騒ぎをするのとで,あまり記憶に残っている印象がよろしくない.それに花や実を落とす.
 
 田舎のツバキの花やキンカンの実は,来襲するヒヨドリによって,毎年おおかた喰われるか落とされるかしている.綺麗に食べ尽くしてくれるならまだマシなのだが,汚く喰い散らかしてゆくので頭にくるのだ.さすがにこの冬のキンカンは尋常でないほどの豊作だったので,ジャムにするくらいは残っている.
 
 カーテン越しに動いた影はヒヨドリのものだった.一羽だけ,ベランダの床の上に.
 
 こちらがカーテンの内側で動くと気配は分かるようで,サッと逃げてしまう.しかし,じっとしていると,ふた呼吸ほどで戻ってくる.動くと逃げる,が,すぐに戻ってくる.何をやっているのだろう.じっとして見ていることにした.
 
 隣家の木の枝からこちらの手すりに飛び乗り,そしてベランダの床に飛び降りる.目を白黒させながら,何かをついばもうとしている.喉を上に向けてククッと丸呑みした.
 
 節分で撒いた豆だった.
 

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