この2週間ほど、断続的に在宅ワークをしてみて体験できたこと。
【結論】
私的には最適な働き方じゃないか? できればずっと続けたい。
【前提】
私の仕事の内容はネットで何か面白いものが無いかな、面白いことができるかな、というのを探したり調べたり考えたりプログラムのプロトタイプを作ったりすること――なので、ネットとパソコンがあればできてしまう仕事だというのがポイントかもしれない。
これが工場のラインで働くとか、営業で歩き回らねばならないとか、交渉担当で会議が連続するとかの、他人と密接に連携しなければならない仕事だと、“現場”に行かねばならないから在宅ワークは不可能だろうし、そういった仕事が得意だとか好きだという人には、ひとりきりで過ごす在宅ワークは苦痛でしかないのだろう。
寂しがり屋の人には向いていない。( 自分が寂しがり屋かどうかはこちらでチェック )
【事情】
昨年、ガンの手術を受けて現在も再発予防のための抗癌剤療法を続けているので、薬の副作用がいろいろ出てくきて結構わずらわしい。痛みなどの副作用で体調が外出向きでないので、だったらムリして通勤しないで在宅ワークはどうだろうか、ということ。前述の通り、私の仕事内容が在宅ワーク向きだったことが幸いした。
まぁ、会議だとか面談だとか取材だとか応接だとか苦手だし、他人が決めた単純な仕事も嫌いだし、ということで私の人生自体が在宅ワーク向きの現在の仕事に流れ着いていたから当然といえば当然なわけだけど。
それと会社の理解があったということも重要な要素なんだろう。これが無かったら単なる「欠勤」でしかない。家族構成によっては家族の理解も必要かな。
【メリットとデメリット】
まず通勤費がいらない。まぁ、通勤定期を買ってしまっているから、その分がムダになっているわけだけど、最初から在宅ワークを前提とするなら通勤費がいらなくなるし、会社も支給しなくて良くなるから双方にとっていいのではないかな。
お金がかからないということなら、通勤のための服が要らなくなる。もともとジーパンにTシャツだったので、この辺のメリットを私自身は実感していない。数年前はスーツを着ていたけど、社外の人に会う仕事でもないので( そういうのは上役が全部やってくれる )ばかばかしくなってやめた。IT系の人達と会うときもTシャツの上にジャケットを羽織ればいいくらい。業界的に恵まれている。
次に、食費が安くなる。外で昼飯を食べるのにくらべれば、半分から3分の一だ。週末にまとめ買いした冷凍食品を電子レンジで温めるとか、レトルト食品やスーパーの惣菜に自分でちょっと手を加えるとかの手間は必要だけど、それだって仕事の合間の気分転換になる。
自宅で過ごすので、自分にとってのお気に入りの快適な環境で働ける。これがもっとも重要な在宅ワークのメリットかもしれない。ちょっと疲れたら数歩あるいて自分だけのソファでくつろげるし、飲み物はほとんど無料に近く飲み放題。ネットラジオで音楽を流し、温度・湿度といった空調を調整できるから、年間を通して摂氏30度の会社で働く、なんて莫迦げた状況とは無縁だ。
そしてなんといっても騒音がない。
会社では常に人が動き回り、電話が鳴り、椅子の軋み音、コピー機やプリンタの動作音に加えて、トナーカートリッジをゆすったり給紙トレイの開閉音などがしていて集中できない。一番の邪魔者は、直接話しかけてきたり電話をかけてくる輩だ。プログラムを書いていてバグがコードに混入する最大原因になる。
「話かけてもいいですか?」、って、もう話しかけてんじゃんかよスカタン!、と心の中で罵りながら笑顔を作るというのは、どうしようもないストレスだ。( そのせいでガンになったのかな?)
ただ、在宅ワークは集中しやすいだけあって、ついつい集中しすぎて仕事をしすぎるという危険があることもわかった。会社に通勤するときのヘドロのようなどろどろの気持ち悪い徒労感ではないけれども、夕方になると脳がくたびれているという疲労感が会社より強い。
「やっぱり、打合せとかは対面じゃないとだめなんじゃない?」と思われるかもしれない。たしかにその通り。ちょっとしたニュアンスが必要な微妙な話とか、社内政治に関することとか、パソコンのモニタ越しのひと言ふた言の“職場の潤滑油”的軽い雑談だとかは、対面でないと成立しない。
が、そんなデメリットを補っても在宅ワークにはメリットがある。( ていうか、それってデメリットか? やめちまえばいいだけのハナシじゃないかな。仕事の本質じゃないもんな )
同僚との物理的な距離があるので、直接話しかけることがなくなる。いまのところコミュニケーションのほとんどは電子メールを使っているが、これが“再考”の余地を与えてくれるのだ。脊髄反射ではなく、状況とか文面をじっくりと考えてから返事をするだけのゆとりができる。
それから、やり取りのすべてがメールのメッセージとして記録される。あとから検索することで、それを探し出せるというのは大きなメリットになる。ちょっとしたシステムの変更だとか、ソフトの操作方法のティップスだとか、そんなものも記録残ると、あとから仕事のデータベースとして使えるのだ。云った云わないがなくなる。
ま、検索なんてことしないレトロスペクティヴな人にはピンと来ないだろうけど。
それに、Skypeのテレビ電話機能だとか、GoogleやYahooのチャットやメッセンジャー、社内つぶやきができる Yammerとか Smart4Bのような Twitterみたいなツールを使ったら、対面に近いコミュニケーションができるんじゃないかな。この辺は今後の研究課題。
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それと、前提条件として大事なことがあった。クラウドコンピューティング( Cloud Computing )が当たり前の時代になってきた、ということ。もしかしたらこれが一番大事かもしれない。
私の仕事環境は、ほとんどを Googleの各種サービスにデータを預けてある。メールは Gmailだし、書類やスプレッドシートやプレゼン資料は GoogleDocs。そして会社では GoogleAppsの有料版を契約してある。スケジュールの設定や共有が Googleカレンダーでできてしまう。
「きょうは在宅でリモートワークです」と、当日の朝にメールで上司に知らせ、ついでに GoogleAppsのカレンダーにその旨書き込んでおけば、上司以外の人にイチイチ連絡する必要もない。
Facebookがソーシャルネットワークを促進するともてはやされているが、Googleは在宅ワークを後押ししてくれるんだろうと思う。だから余談になるけど Facebook vs Googleという構図で考えている人は、たぶんピンボケで世界を見ているんだろうなぁ。両社たがいに全然性格が違うんだから。Facebookで在宅ワークはできないよ。
他にも Evernoteとか Dropboxとかある。サーバの知識がある人なら、レンタルサーバを月500円くらいで借りてそこを自分専用のストレージに使えるだろうし、だいたい最近は MySQLとか Wordpressのインストールキットが付いているので、倉庫兼店舗としてウェブサイトを開くこともできる。
どうしても不安だという人のために、週に1~2回くらいはフレックスタイムで出社するとか方法もあるだろうし、何も会社まで行かなくても上司の外出予定とタイミングを合わせて、どこかのカフェでミニミーティングなんて選択肢だって可能だろう。
( そうか。在宅ワークが増えると、街中に関連ビジネスを展開できるね。ミーティングスペース付きのカフェとか増えそうだ。もちろんWi-Fiと電源とホワイトボードとプロジェクタ貸し出し可能で )
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【今後の課題】
小手先の課題としては、SkypeやらDropboxといったツールを使って何をどこまでできるかを検証すること。できれば会社の人たちにもすすめて使ってもらうこと。
長期的な課題としては、在宅ワークが日本で促進されたときに仕事の世界がどのように変容しているのかを考えること。できればそれに対応したビジネスを展開できればなぁ、と。ただしここにはリスクもあって、そんな世の中になったとき、果たして当社の存在価値が残っているんだろうか、という懸念がある。たぶん「会社」という形態自体が時代遅れになって絶滅決定種になっているんだろうなぁ、と。
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ところで、どうして私の席はいつでもコピー機とかプリンタのそばなんだろうか。「やった! 今回の席替えは静かなところだ」と喜んでも、すかさず新設のプリンタが背後に置かれたりして、しかもミミッちいことに裏紙を使うからジャムってばかりで、そのたびに給紙トレイをガチャガチャ、バンバンやってくれるし……。私自身、プリンタは年に2~3回しか使わないんだけどなぁ。もちろん、プリンタのメンテなんてしません。
きっと、在宅ワークは紙の節約にもつながります。
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日本で Googleのようなものが生まれないのは、みんな会社のような組織で働くのが好きだから、かな?